食欲不振、疲労回復に効くクマザサ原形物質
サンクロン

クマザサの成分は制癌作用もあると報道された
 ドクダミ、ゴマ、ハトムギ、ヨモギ、アシタバ、クコ、ニンニク、レンコン、マタタビ、ベニバナ、マコモなど、民間療法に使われている野草や植物は多い。身近な植物が風邪や胃腸病、慢性病などの予防・治療法になるとして昔から民間に伝わり、現在でも一定の評価を得て健康に奉仕している。だが、医療品としての認可を得るまでには至っていない。そうしたなかで、「サンクロン」は民間療法的環境のなかで育ちながら医薬品の認可を得た、数少ない部類に入る“民間疲労回復薬”といえる。  サンクロンはクマザサの生葉を特殊処理して抽出した細胞液である。日本食に笹は馴染みが深い。粽(ちまき)は餅菓子を笹の葉で巻き、魚屋や寿司屋ではクマザサが添えられている。この古くからの習慣は笹の持つ防腐・防臭・防湿作用の利用である。笹に含まれる安息香酸が殺菌作用をもたらしている。
 さて、そのクマザサとは何か。

≪クマザサ(ヤキバザサ、ヘリトリザサ)〔ササ属〕(いね科)隈笹。
 <形態>地下茎は細長く匍匐(ほふく)し、先は直立して稈(かん)となる。
     稈は細長く中空の円筒形で、高さ40〜100センチ、上部はまばらに分枝する。
     葉は枝先に4〜7片掌状に並び、幅広い長楕円形で、冬は葉の緑が白色に隈どられる。
 <薬用部分>葉。新鮮な生葉を用いる。
 <成分>葉には、トリテルペノイドのβ‐アミリン、フリーデリン、グルチノールなどが
     含まれる。その他、葉緑素、鉄、カリウム、マグネシウムなどのミネラル成分のほか、
     ビタミンC、K、B、B2、カルシウムが多く含まれている。
 <薬効>民間薬として健胃、胃のもたれに用いられる。近年、糖尿病、高血圧に効果があり、
     また多糖体画分に制癌作用があるという記事が新聞に報道された≫

(三橋博監修『原色牧野和漢薬草大圖鑑』北隆館、昭和63年)

 このクマザサの抽出液を医薬品として開発したのが金子卯時雨(うじう)(1903〜94)である。卯時雨は明治36年(1903)に福岡の医者の家に生まれた。ところが中学1年生のとき、脊椎(せきつい)カリエス(脊椎が結核菌に侵され破壊される。結核の治療法が確立していなかった時代は不治の病とみられた)に罹(かか)り1年間の休学を余儀なくされた。味噌汁に肝油(ビタミンD)数滴と日光浴という原始的な方法でいちおう治療できた。
 しかし、病弱な体が治ったわけではない。親戚縁者はほとんどが医者という環境だったが、彼は医学部に進まず、九州大学農学部農芸化学へ進学した。医者の父からカリエスがぶり返すとつねに言われていたのが納得できず、医者という職業に反発を覚えていた。
 医の根源にあるのは農であると考え、食物の研究をして、自ら蒲柳(ほりゅう)の質でどうしたら健康になれるかを研究しようと思い立った。このときの決意と展望が、のちにサンクロンの開発に行き着くのである。
 卯時雨は、現代医学に病気になる原因の解明には力を入れているが、“病人になるわけ”の解明がなおざりにされていると考える。だから医者も患者もなぜ病人になったのかの認識がなく、結局、再発を繰り返すという悪循環に陥る。
 病人になる理由として、基本生活の「不当」を挙げる。基本生活とは、人間としての生活体が適正な環境の下、呼吸し、神経が働き、水分、養分を摂取して動くとイメージされる世界である。この基本生活に手抜かりがあると、基礎体液は劣化汚染して、60兆の細胞からできているヒトの組織・器官は正当に生きることができなくなり、そのために生活体の健康状態は病状になる、と考えた。

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